憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
「ちょっと耳にしたんだけど、あなた立花診療所でデイサービス始めるんですってね?」
「は? はい」
今さらかと思うと、つい怪訝な声が出てしまった。
「もう準備は整っておりますので、来春から始めます」
「あの家で、なんてことを!」
博子はかなり怒りを感じているのか、大きな声を出すし顔を赤くしている。
「どうしてそんな勝手なことをするの?」
「どうしてと言われましても、今後は在宅医療に力を入れて行きたいと思っていましたので」
あたり前のように由美が答えたら、克実が賛同してくれた。
「ああ、いい考えだな」
「在宅訪問をしている患者さんが増えていますので、おばあ様のケアを考えるといい機会かと思っています」
克実は頷いている。
「自宅で過ごしたいという患者さんも多いだろう」
「ええ、なるべく孤独にならないように過ごしていただきたいです」
克実と由美が話していても、父の義実はひと言も口を挟まない。
「あそこはいずれ裕美の新居にしたいと思っていたのよ」
いきなり博子が口を挟んできた。
「え?」
そんな話を由美は聞いたこともなかった。
「ねえ、あなたからもなにかおっしゃってくださいな」
博子は義実の方に目をやって発言を促したが、義実は無言のままだ。