憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
博子の言葉に反応したのは裕実だった。
「まさか……あなた、私の縁談を聞いて柘植先生を誘惑したの?」
わなわなと震えながら由美を睨みつける。
(ああ、いつかと同じ目だ……)
今夜は父と克実がいるが、由美が初めて東京に来た日もこうだった。
義姉に睨みつけられて、義母に無視されて辛かったのを思い出した。
ただあの頃と違うのは、由美も大人になったということだ。
なにを言われても、もう俯かない。
勉強して医者になって、自分の力でデイサービスを始めるのだ。
ひとりの大人として、しっかりと自分の足で人生を歩いているのだから。
「診療所のことも柘植先生のことも、みなさんに誤解されるようなことはなにひとつありませんから」
毅然と由美が反論すると、裕実もそれ以上は言い返してこなかった。
ただ、義母は納得できないのか義実にむかって叫んだ。
「あなたもなにかおっしゃって!」
父は、ひと言ポツリと呟いた。気怠そうにしている。
「もう十分だ。これ以上の話し合いは無用に願いたい」
まるで他人のように妻を見る。
「あなた……」
その視線を受けて、支えを失ったように博子は呆然としたままだ。
義実は視線を由美に移した。
「すべて、私が悪かった。すまない由美」
唐突に父から謝罪の言葉を言われて、由美は面食らっていた。
真っ直ぐに父から見つめられたのは、初対面の日以来だ。
「院長……」