憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
義実の冷たいまでに整った顔が少し歪んだ。
「そうか……父とは呼んでくれないんだな」
応接室にいた面々は、義実のひと言でシンと静まりかえった。
まさかそんな言葉が義実の口から出てくるとは、想像すらしていなかったのだ。
その静けさの中、大きなノックの音が響いた。
「失礼します」
返事を待たずに強引に部屋に飛び込んできたのは直哉だ。
「ああ、やっぱり……」
「なんだい柘植君、やっぱりって」
克実が、突然現れた直哉にいつも通りの口調で声をかけた。
「すみません……ミミ先生が吊し上げにあってるって、あちこちから連絡をもらったので駆けつけました」
けろりと明るい声で直哉が言うと、克実が笑い出した。
「なんだそれ、悪い冗談か?」
「彼女を心配している人が、この病院には大勢いるってことですよ」
「あ……そんな……」
その言葉を聞いて、博子はソファーに顔を埋めるようにもたれかかった。
もうなにを言い返す気力がなさそうだ。
直哉は応接室のメンバーを見渡すと、はっきりと宣言した。
「由美さんは僕がいただきます。必ず幸せにしますのでご了承ください」
結婚の挨拶なのか、なんの宣言なのかわからないが妙に説得力のある言葉だった。
「騙されないで、先生!」