憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
唐突に、裕実の乾いた声が部屋に響く。
「この子はね、綺麗な顔してても奔放なのよ。男の人にだらしないの」
「裕実、やめなさい!」
克実が止めても、裕実は喋り続ける。
「五年前にどこの誰だかわからない男の子を妊娠して、流産してるのよ!」
裕美は憎しみのこもった目で由美を見る。
(ああ……私、ここまで嫌われていたんだ……)
由美は怒りより、残念な気持ちの方が勝っていた。
普段は美しい義姉が、ひどく醜く見える。
そっと直哉の顔を見たら、怒るというより余裕の微笑みを見せている。
「申し訳ありません。その、どこの誰だかわからない男は僕です」
直哉は堂々と、過去の事実を告白した。
応接室にいたメンバーは呆気にとられた顔をしている。
言いだしたはずの裕美は、口を開けたままポカンとしていた。
「色々あって……すべてお話しできませんが、僕たちには深い繋がりがあるんです。あの時の責任は僕にありますので、彼女を責めないでください」
「……直哉さん」
由美と直哉は、ふたりだけに通じるかのように見つめ合う。
「君の言い分はわかった。柘植君、由美を頼んだよ」
重々しい義実の声が、応接室に響いた。
それは、これ以上話し合うことはないという宣言だろう。
もう誰も口を開くことはなかったが、裕実だけは悔しそうに涙をながしていた。