憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
愛を育んで
「行こう」
直哉が由美に手を差し出した。
「はい」
由美はすぐにその手に自分の手を重ねた。
手を繋いで応接室から出ていこうとするふたりに、克実が声をかける。
「由美、君は私の妹だ。それに、優秀な医者でもある」
義兄の精一杯の思いやりが由美にも伝わってきた。
「お義兄さん……ありがとう」
「おまけに、柘植君が義弟になるんだ。最高じゃあないか!」
両親や裕実がいる前で、大きな声で克実が宣言する。
「ふたりとも、おめでとう!」
「ありがとうございます、先輩」
ふたり並んで頭を下げてから、応接室のドアを開けて廊下に出た。
「帰ろう」
「ええ……」
久しぶりに手を繋いで歩き始めたとき、廊下の向こうから小走りにやってくる理香が見えた。
かなり慌てているのか、髪が乱れている。
「遅くなってごめん。由美ちゃん、大丈夫だった?」
「理香さん、私のために来てくれたの?」
「もちろんよ……あれ?」
理香は、目の前のふたりが手を繋いでいるのに気がついたようだ。
「え~と、ふたりは?」
由美と直哉は顔を見合わせてから、理香に頭を下げた。
「色々ありましたが……これからもよろしくお願いします」
それだけで、理香には伝わったようだ。