憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
すっかり日も暮れた時間、ふたりは直哉のマンションへ帰り着いた。
由美が初めてここに来たときとあまり変わっていない、殺風景なマンションの一室だ。
家具はほとんど置いていないし、テーブルの上には医学雑誌や英文の資料が散乱している。
「ああ、酷いところに連れて来てしまったな、すまない」
「忙しいんでしょ、毎日」
「それは言い訳にならないさ」
直哉は由美のほっそりとした体に腕を回してきた。
「自分の至らなさを言い訳にするのは懲りたんだ」
「直哉さん……」
「君に会う時間さえ作れたら、他はどうだってよかったから」
直哉の腕のなかは、温かくて心地よい。
「由美の匂いだ…」
「え?」
思いがけない直哉の言葉に驚いた。
「ERですれ違った時、一瞬で思い出したんだ」
「五年も離れていたのに?」
「由美だからさ」
ああ、この人は五年間忘れないでいてくれたんだと思うと、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。
「あなたは私を責めないの? あなたを信じなかったのに」