憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
由美は、父親は母と結婚する前に亡くなっていると思い込んでいた。
すぐには信じられない由美に、弁護士は子どもにもわかるように事情を説明してくれた。
かつて母は東京で立花診療所に勤めていたこと、そこの院長夫妻が由美の祖父母にあたることを聞かされた。
ただ肝心の父には別の家庭があると言われても由美にはピンとこなかった。
(奥さんや子どものいる人が私のお父さん? どうして?)
しかも母からの手紙を読むまで、由美の存在を祖父母も父も知らなかったと教えられた。
病気になった母が由美の将来を心配して、祖父母にあたる立花診療所の院長夫妻を頼ったらしい。
『おじい様とおばあ様は、由美さんに会いたがっていますよ』
弁護士は‶父が会いたがっている″と言わなかったことに、その時の由美は気がつかなかった。まだ大人の事情を知るには幼なすぎたのだ。
それからはあっという間だった。
母が亡くなったために由美が相続する長谷川家の財産のことは、大人たちが協議して弁護士に一任することになった。
ひとりぼっちになった由美は父親の籍に入るのだと聞かされたが、実の娘でありながら認知はされていない。
義実の妻の博子が猛反対したため、戸籍上では養女になっている。