憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
金沢しか知らなかった由美は、生まれて初めて飛行機に乗り羽田に着いた。
東京都内の高層ビルを見て、大都会で暮らせるんだとときめいた。
(ここにお父さんがいるんだ)
ドキドキしながら由美は弁護士に連れられて立花家に向かった。
タクシーの中から初めて目にした立花家は、驚くほど広い屋敷だった。
金沢での母との暮らしとは比べものにならない豊かさに、由美は目を見開くしかなかった。
(すごい……)
芝生の広がる庭を横切り、タクシーが玄関に着くと女中らしい制服姿の人が出迎えてくれた。
案内されて入った応接室も見たこともない豪華さだ。
ふかふかの絨毯が敷かれ、絵本でしか知らなかった暖炉もあった。
看護師として忙しく働きながら由美を育ててくれた母。
だが由美の存在を知らなかったという父は、こんな暮らしをしていたのだ。
(お母さんがかわいそう……)
当時の由美には、‶かわいそう″という言葉しか浮かんでこなかった。
部屋の中をぐるりと見たら、ゆったりとソファーに座ったままじっと由美の顔を見ている男の人がいた。