憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
『お母さま、この人はうちに住むの?』
義姉は不服そうに唇を尖らせて、甘えた声で母親に話しかけている。
『さあ?』
その言葉に、弁護士が肩を震わせたのが由美にもわかった。
『旦那様からなにも指示を受けていないもの、どうすればいいのかしらね?』
義母は、白髪交じりの弁護士に答えを求めるように言葉をかけた。
この娘の父親からなんの指示も聞いていないから、自分は関係ないと開き直った態度だ。
『今日はこちらにお連れするお約束でしたし、金沢から荷物も届いていると思いますが……』
弁護士は言葉を選ぶように、慎重に発言した。不機嫌そうな博子をこれ以上刺激したくないと考えたのだ。
『ええ、とりあえず納戸に入れておきました。どのお部屋に住んでもらうか決まっていないの』
義母は淡々と答えている。
由美はすぐ側にいるのに、まるで目に入っていないかのような言い方だ。
『ですが、こちらで由美さんをお育てになると聞いておりますが』
弁護士は少し厳しい口調で義母に詰め寄ろうとしたが、その言葉は途中で遮られた。
『私はイヤだ! お母様、この人と一緒に住みたくないわ!』
義姉の裕実が大きな声で叫んだので、義母はなだめるように娘の肩に手をかけて言った。
『仕方ないでしょ、この子はお父様の娘だそうだから』
『イヤだ! 妹なんていらない!』
裕美は声をあげて、激しく泣きだした。