憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


『困ったわね……』

そう言いながら首を傾げてはいるが、義母は顔色ひとつ変えていない。

『お姉さんだなんて、ぜったい呼ばせないから!』

裕実は泣きながら、自分の言い分を叫んでいる。

『当たり前でしょ、この子はうちの家族ではないのよ』

義母と義姉の会話は、由美の心に突き刺さる言葉の連続だった。
東京に来るまで、由美は実の父親とその妻や義理の兄姉に会えることを心の支えにしていた。
母は亡くなってしまったが、自分はひとりぼっちではなかった。
新しい家族ができるのではと期待していたのだ。

(私は生まれてきちゃいけなかったのかな?)

やっと中学に入る年頃の由美には、自分の気持ちを表す言葉が浮かんでこなかった。
父は不機嫌そうだったし、この家では誰も自分を歓迎していない。
義母と義姉の話を黙って聞いているのは辛かった。悲しすぎて涙も出なかった。

じっと母子の会話を聞いていた弁護士は、なにか思うところがあったのだろう。
義母に二言三言告げると、すぐに由美を連れて屋敷を出たのだ。

『おじい様の家に行きますよ』

弁護士の言葉通り、由美は父の家から車で十分もかからない祖父母の暮らす立花診療所に連れて行かれた。


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