憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
弁護士が祖父母にどう説明したのか、由美の記憶にはない。
『あなたが由美ちゃんなのね……』
優しそうな顔をした祖母だという人は、なにも言わずに由美を抱きしめてくれた。
その隣で、祖父らしい人は黙って由美の頭を撫でてくれている。
全身で祖母の体温を感じているうちに、由美はポロポロと泣き出してしまった。
『ごめんなさい、ごめんなさい……』
生まれてきてごめんなさい。お母さんが、ごめんなさい。
そして、東京に来てしまってごめんなさい。
そんな思いが溢れてきて、由美は謝罪の言葉しか言えなかった。
母のお葬式の日から泣くことを忘れていた由美は、とうとう大きな声をあげながら祖母の胸で泣き続けた。
その日のうちに立花診療所へ由美の荷物は運ばれ、祖父母との暮らしが始まった。
弁護士の行動と祖父母の慈愛がなければ、由美はどうなってだろう。
由美の母と父の関係は立花家ではタブーだった。
由美は今でも、ふたりの過去にどんな事情があったのか詳しくは知らない。
ただ立花家に引き取られた日に受けた仕打ちは、彼女の心に深い傷を残していた。
自分が生まれてきた意味を知りたかった。
自分は愛される価値があるのかどうかという不安を、いつも胸の奥に抱えているのだ。
ただ、母のような生き方だけはしないと心に決めていた。