憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました

 
コーヒーを持って来てくれた看護師は、お喋り好きなようだ。
由美の側で、色々な話題を提供してくれる。

「今夜は忙しかったからミミ先生が当直でよかったって、ERの皆も言ってましたよ」
「皆さんこそ、休む間もなかったでしょ」
「でも、今夜は目の保養させてもらいました!」

看護師は少し頬を染めて由美にこっそり打ち明ける。

「今度この病院で働くドクター、ステキでしたよ。ミミ先生お会いになりませんでしたか?」

由美は知らないふりをして、看護師の情報を聞くことにした。

「新しいドクター? さあ、わからないわ」

ブラックコーヒーのほろ苦さが、現実を思い出させてくれた。
直哉はどうやらこの病院で働くことになったらしい。
病院内の情報を家族から聞くことのない由美は、まったく知らなかった。

「サンフランシスコ帰りらしいですよ。副院長先生の後輩だそうです」

直哉がアメリカで勉強していたことまで広まっているようだ。

「そう。実力のある方なのね」

由美が相槌を打つと、看護師はニコニコ顔で話を続ける。

「背が高くて、眉がきりっとしたお顔でしたよ」
「そうなんだ」
「え~、ミミ先生は興味ないんですか?」
「私はパスかな」

若い看護師の中には、医師の妻に憧れている人も多くいる。
もし今も直哉が独身なら、彼女たちの注目を集めることだろう。
由美は笑って、直哉の話を打ち切った。一夜にしてこれほど注目されているのだ。自分との過去は、けして知られてはいけないと由美は固く心に決めた。



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