憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
手を洗ってから由美がダイニングルームに行くと、先客がいた。
「や、お帰り」
「森先生!」
大きなダイニングテーブルにむかってのんびり昼食をとっていたのは、祖父亡きあと医療法人となった立花診療所で院長として働いてくれている森純也だ。
彼は大学病院に勤めていた優秀な医師だが、退職して立花診療所にきてくれたのだ。余りの忙しさが妻との離婚原因になったので、大学勤めが嫌になったらしい。分厚いメガネ越しの人懐こい笑顔が近所の患者さんからの人気を集めていた。
「どうなさったんですか? 日曜日に……往診?」
「いや、溜まったカルテの整理をと思ってね。診療所にいたら五月さんが声をかけてくれたんだ」
「そうでしたか。私もお昼をご一緒させてください」
五月が準備してくれていたおにぎりや味噌汁を手早くテーブルに並べて由美も席に着いた。
「いただきます」
美味しそうにおにぎりを頬張る由美を見て、森は呆れ顔だ。
「昨夜は忙しかったのかな?」