憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


『僕は、柘植直哉です』

簡単な自己紹介の後、直哉とはすぐに打ち解けて話せた。
人見知りの由美にとって信じられないくらい直哉とは話が弾むのだ。
彼は静岡の出身で、東京の大学で学んだあと附属病院で後期研修医として学んでいるという。
彼から『分科会のあとで食事をしよう』と誘われて、すぐに頷いてしまった。

母の生き方が反面教師となっていたので、由美は恋愛に対して臆病だった。
中学高校時代は、告白されても異性と付き合ったことはない。
せいぜい男女数人ずつのグループで、人気の遊園地に行ったくらいの経験だ。

母のような悲しい恋をしたくなくて、由美は男性に対して慎重だった。
男性不信かもしれないと自分でも思っていたのだが、初めての恋は由美の性格まで変えてしまったようだ。

食事が終わる頃には、次に会う日の約束をしていた。
そしてまた、次の約束をする。
毎日のようにお茶をしたり図書館で待ち合わせをしたりするうちに、彼のやや強引な誘いがないと寂しく感じるようになっていた。



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