憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
寝物語かもしれないと半信半疑だった由美は、その腕の力強さで直哉を信じた。
自分を大切にしてくれる人と出会えた喜びで泣きそうになった。
『これからも、ずっと……側にいてくれ』
『嬉しい。私も、あなただけ愛してる』
由美は涙をこらえて、自分の素直な気持ちを直哉に伝えた。
彼の腕の逞しさ、体から伝わる体温の心地よさ……すべてが愛しい。
短い間に、直哉は由美にとって大きな存在になっていたのだ。
『いってらしゃい。待っているわ』
直哉が東京に帰る日に、ふたりは空港のロビーで別れのひとときを過ごした。
間もなく飛行機に乗るという時間になって、直哉は小さなダイヤの指輪をポケットから出して由美に見せた。
『これ……約束のしるし』
『直哉さん、ダイヤの指輪は……』
その意味をわかっていたように、直哉は由美の左の薬指にそっとはめてくれた。
指輪は少し大きかった。
『あ、ゴメン。緩いかな?』
『ううん、大丈夫』
由美の声は震えていた。泣きそうになるくらいにくらい嬉しかったのだ。
『こんど迎えに来るときには、でっかいダイヤの指輪をプレゼントするよ』
『大きさなんて……あなたが迎えに来てくれるだけでいい』
由美と直哉はあっけなく、日本とアメリカに離れてしまった。
それからは、再会できる日を楽しみに電話やメールで愛を伝えあっていた。
会えないのは寂しい。体を合わせないのは心細い。
由美は、直哉との愛はこのままずっと続くと信じていた。
彼も同じ気持ちだと疑うこともなかった。
あの日までは……。
愛していた人に憎しみを抱くようになるなんて、当時の由美には思いもよらないことだった。