憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
そして、現在
由美はパチンと自分の手で両頬を叩いた。
(思い出に浸ってる場合じゃあない)
由美にはやることが山ほどあった。
この立花診療所で、来年春からデイサービスを始めようとしているのだ。
きっかけは、祖母の美也子の体調だった。
明るい人だったのに、祖父を亡くしてから気落ちしたのか無口になってしまった。
買い物に出かけたり食事をしたりするのも億劫なようで、気がつけば一日リビングルームでぼんやりするようになったのだ。
『気をつけないと、認知症になってしまうかも』
五月が心配し始めたので気をつけて様子を見ていると、あれほど上品だった人が食事をポロポロとこぼし始めていた。嚥下の力も弱くなったのだ。
由美も焦ったが、診療所を任せていた森医師と相談してここでデイサービスを始める計画を立てた。
祖母のためでもあるが、立花診療所では在宅の患者さんを定期的に診察しているし往診することも多かった。
だから近所の高齢の人がここに集まって、リハビリしたり食事をする楽しい時間を過ごせたらと考えたのだ。
幸い敷地は広いし、母屋はすでに美也子のためにバリアフリーにリフォーム済みだ。
由美は二階で生活しているからスペースは十分あるし、少しの改築だけですみそうだ。