憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


昔の恋人とイメージがダブった女医は、名前すらわからないままだった。
同じ病院で働いていればそのうち会えるだろうと軽く考えていたが、なかなかチャンスは巡ってこない。

そのうち、病院内の情報が直哉の想像以上に集まり始めた。
短い休憩時間でも看護師たちが直哉に話しかけてくるのだ。
独身のアメリカ帰りの心臓外科医というだけで、どうやら彼女たちから関心を持たれているらしい。
二~三週間もすれば、直哉はフランクな性格だから周囲ともかなり打ち解けてきた。

ある日の午後、従業員食堂の端にある喫茶コーナーでスタッフ数人とコーヒーを飲んでいたら知らない名前が聞こえてきた。

「ミミ先生?」
「あ、柘植先生はご存知ありませんか?」
「さあ、病院のホームページにミミさんって名前のドクターいたっけ?」

なぜか気になって、珍しく直哉から看護師たちに尋ねてみた。

「ミミ先生の本名は立花由美さんですよ」
「立花さん?」

ホームページで見た記憶がなくて直哉が聞き返すと、看護師たちはしまったという顔をみせた。


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