憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


由美は、西関東総合病院の勤務がない時間はできるだけ立花診療所で過ごしている。
将来的には診療所を受け継ぐ覚悟を持って、森医師の指導を受けていた。
ここはレントゲンや超音波などの機器もあり、診療所としてはまずまず充実しているから勉強になる。

「由美先生、ご存知でした?」
「なあに?」

午後の診療開始には少し早い時間だ。
由美が美也子の血液検査の結果を確認していると、受付を担当しているベテランの加藤明子が話しかけてきた。
受付は彼女を中心に、パートの女性数人が交代で受け持ってくれている。

「あっちに今度いらしたドクター、裕実さんのお婿さん候補らしいですよ」
「へえ~」

あっちというのは西関東総合病院のことだ。
普段から事務連絡を取りあうことも多いせいか、明子は病院内の情報に詳しい。
興味があったのか看護師のリーダー、前川早苗も話しに加わってきた。
早苗は先代の院長時代にここを受診していたらしく、昔働いていた由美の母のことも記憶にあるという。
今ではスタッフをまとめる信頼できる看護師だ。

「私も聞きましたよ。アメリカで勉強された先生でしょ?」

早苗も噂を耳にしていたようだ。

「そうなの! ビックリよね。あの裕実さんと結婚したら苦労するでしょうに」
「でも、彼女は美人でお金持ちだもの。院長や克実さんのバックアップを受けられたら大学病院で出世できるんじゃない?」


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