憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
明子も早苗も遠慮がない。
いつも由美に当直をさせる裕実にはいい感情をもっていないのだ。
「いいじゃない、本人同士が結婚したいなら」
直哉が父の病院で働くことになった本当の理由がようやくわかった。
単に心臓外科医として優秀だからではなく、義姉の結婚相手としてだったのだ。
由美は自分の手が微かに震えているのに気がついた。
それを悟られないように、さりげなく話を終わらせようとしたがふたりのお喋りはとまらない。
「でも、もし結婚したら由美先生のお義兄さんになるんですよ」
「どんな人か興味ありませんか?」
「別に……」
由美は軽く受け流そうと思ったが、直哉と裕実の寄り添う姿が頭の中に浮かんでくる。
「ですよね~」
「でも、情報が少なくて……お婿さんになる人とは聞いたけど、正式に婚約したって話はまだ入ってこないんですよ」
由美の様子を気にもとめずに、ふたりの話は盛り上がる。
忘れていたはずなのに、直哉が結婚すると聞くと心が痛い。
(義姉と結婚する?)
直哉と身内になるのだけは勘弁してほしかった。
ふたりの結婚式に参列させられている自分を想像したらぞっとした。
「あれ? 由美先生、五月さんがおみえですよ」
三人で雑談しているところに、家政婦の五月が遠慮がちに顔を見せた。