憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
20分もしないうちに、五月と佐々木母子が立花診療所へやってきた。
可愛らしい少女は自動ドアを入るときには不安そうにしていたが、由美が白衣ではない普段着のTシャツ姿で診察室に座っているのを見ると笑顔を見せた。
「お名前教えてください」
「佐々木とも子。五歳です!」
とても元気に答えてくれたので、由美も気持ちがほっこりとした。
看護師の早苗も五歳児の愛らしさに目を細めている。
「ともちゃんでいいかな?」
「うん!」
「私は由美先生です。お話聞かせてね」
「は~い」
女の子と会話しながら、さり気なく細かな症状を聞き出していく。
「どんな時、胸がドキドキするのかな?」
「えっとね、幼稚園でお水遊びしたときとか~」
とも子が話したり笑ったりする様子と息使いを観察する。
それから怖がらせないように気をつけて心電図をとった。
母親はずっと側についていて心配そうだ。
由美ととも子のやり取りを見て、診察しているのか雑談しているのかわからないので余計に不安なのだろう。
ひと通りの診察を終えて、由美はとも子を受付の明子に任せて母親と話をした。
「ここではこれ以上の詳しい検査ができません。西関東総合病院の心臓専門医に紹介状を書きますから、精密検査をしてみましょう」
母親が泣きそうな顔をしたので、側についていた早苗がその背に手をかけて励ましている。