憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
翌日の午後、予約した時間の少し前に佐々木母子と待ち合わせをした。
由美はふたりと共に、克実の診察室を訪ねた。
「急にお願いしてすみません」
「いや、たまたま予約のキャンセルがあったんだ」
診察室に入って克実の顔を見ると、案の定とも子がグズグズと泣き出した。
子どもの目からは、クールな克実の表情が恐ろしく思えたのかもしれない。
「ともちゃん、恐くないよ~。このおじさん、由美先生のお兄ちゃんなの」
とも子が大きく目を見開いて克実を見た。
「ほんとだ~。そっくりだ~」
「ちっとも怖くないからね」
由美の言葉に安心したのか、とも子がニッコリと微笑んだ。
おまけに克実が必死で笑顔を作ろうとして、頬が引きつっている。
その表情が可笑しいと、またとも子が笑った。
とも子の緊張も解れたので、由美は克実に任せて自分の持ち場に戻った。
それからの診察や検査は順調に進んだと、兄から連絡が入ったのは夕方になってからだった。
「時間はあるか?」
「はい。指導医の回診はもう終わりました」
「なら、副院長室へ来てくれ」
結果を由美にも話しておくからと、克実の部屋に呼ばれた。