憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
「よく気がついたな。お前の見立て通り、心房中隔欠損症だ」
「やっぱり」
由美が診断した病名を、義兄はきっぱりと断言した。
「今後はうちの病院で預かって手術したい」
「よろしくお願いします」
義兄の力強い言葉に、とも子の未来が保証されたような気がする。
由美から見ても、克実はとても優秀な心臓外科医なのだ。
「穴も小さいし、これからの成長にも問題ないだろう」
その言葉を聞いて、やっと由美も安堵のため息をついた。
「よかった……克実先生に頼んで」
「もう先生に戻ったか?」
いつになく、克実が悪戯っぽく由美に話しかけてきた。
「あ、さっきはとも子さんがいたから……つい」
「お前にお兄ちゃんと呼ばれるとはな」
克実は思い出したのかニヤニヤとしている。
遠慮もあって、普段から由美は‶克実先生″と呼んでいるのだ。
「ごめんなさい」
義兄の気分を害したかと思って由美は焦った。
「いや、構わない。‶お兄ちゃん”と呼ばれるのはいいもんだなと思ったよ」
「あの……」
「お前は私の義妹なんだって実感した。今更だがな」
しんみりとした口調になった克実に由美は戸惑った。
義兄の少し悲しそうな表情など、これまで見たことがなかったのだ。
その時、ノックの音が部屋に響いた。