憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


「失礼します。副院長、先日の遺伝子検査の結果が出ました」

報告を急いでいるのか、走り込むように副院長室へ入って来たのは柘植直哉だった。

ドアが開いた瞬間に彼だと気付いた由美は、慌てて背を向けた。
青いスクラブが引き締まった体によく似合っている。
半袖から覗く彼のたくましい腕を見て、由美はときめいた。
何度、その腕に抱かれただろうか。
彼の体温を思い出すと、胸の奥がドキドキと脈打つような気がしてきた。

彼は、副院長の方をまっすぐ向いている。
克実の向かい側に俯いて座っている由美には気がついていないようだ。

「ああ、ありがとう。丁度よかった、義妹を紹介するよ」

克実の言葉に、由美はキュッと身が縮んだ。
こんな再会をするなんて、予想もしていなかったのだ。

(落ち着いて! もしも病院内で出会ったらって、シミュレーションしたじゃない)

頭の中では、突然に顔を合わせたらどうするか考えていたのだ。
廊下ですれ違ったとき、ERで働いているとき……。
だが、義兄といるときに再会するとは思ってもいなかった。

「私の下の義妹、由美だ。呼吸器内科で後期研修中なんだよ」

息をとめて、由美はゆっくり立ちあがりつつ直哉の方を振り向いた。

「はじめまして」

由美の顔を見た時の直哉を、なんて言えばいいのだろう。
先ほどまでの自信に溢れたドクターの表情ではなく、無防備な青年の顔だった。


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