憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
焦り
***
(由美?)
立花由美だと紹介された女性は、直哉の記憶にある‶長谷川由美″だ。
だが、克実は自分の妹だと言う。
直哉は混乱していた。
(じゃあERで感じたのは、ほんとうに由美の香りだったんだ……)
『はじめまして』
あの頃は長かった髪は、今は肩に届くかどうかくらいで切りそろえられている。
学生時代の真面目でおっとりとした雰囲気から、シャープな美しさに変わっている。
どちらにしても、目立つ容姿が由美だと直哉に告げている。
だが、なにかがおかしい。
(はじめまして? 自分との関係を副院長には隠したいということか?)
直哉が考えているうちに、由美はさっと身を翻して副院長室から出て行った。
「素っ気ない妹ですまない」
「いえ……」
直哉はハッとした。
(追いかけないと!)
検査結果を克実の前に置くと、急いで自分も副院長室から出ようとした。
「おい、柘植君」
「すみません、急用を思い出しました」
それだけ言うと、廊下に飛び出したが由美の姿はもう見えなかった。