憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
「久しぶりの日本なので少々戸惑っていまして、コンシェルジュの世話になっています」
「君ならすぐに慣れるさ。柘植君がうちで一緒に働いてくれることになって嬉しいよ」
直哉は克実とは同じ医大で一年後輩にあたる。
同じ心臓外科医として、お互いに尊敬しあえる関係を築いていた。
「当分は大学病院と掛け持ちになるので、手術日などの調整が必要になりますがよろしいですか?」
「もちろんだ。向こうで学んだ君の力を借りて最新の心臓手術に取り組みたいと思っている」
「はい。よろしくお願いします」
その時、ドクターハートのアナウンスが流れた。
緊急を知らせる館内の放送だ。
「ドクターハート、十二階、ICU1223……」
克実には院内用のスマートフォンでも連絡が入ってきた。
ICUで治療中だった患者の容体が急変したらしい。
加えて高速道路で多重衝突事故があったため、多数の患者が運び込まれている慌しい状況を知らせてきた。
「柘植君、さっそく仕事だ。救急に心臓に持病のある患者が搬送される」
「わかりました」
「私はICUへ行くから救急の応援を頼む。ERへ連絡は入れておく」
ふたりはエレベーターホールまで急ぎ、克実は十二階のICUへ柘植は一階ERへとそれぞれの現場に向かった。