憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
由美はスーツケースを持ったまま、すぐに家から飛び出した。
とにかく彼から遠ざかることを考えていたので、それからのことはよく覚えていない。
(なんど連絡しても繋がらなかったのはあの人とひと晩中、一緒だったからなんだ)
冷静になろうとしたが、無理だった。
大好きな人に会いに行ったのに、まさか彼にもう恋人ができていたなんて。
(恋していたのも、夢中になっていたのも私だけ……)
彼にとって、由美はひと夏だけの関係なのだろう。
サンフランシスコへ行けば終わると思っていたのに、会いたいという由美を面倒な女だと思っていたかもしれない。
直哉の‶迎えに来る”という約束を信じた自分は、なんておめでたい人間なんだろう。
将来とか、ずっと側にいてくれとか、彼の甘い言葉に踊らされた自分が惨めだった。
(やっぱり、恋なんかしちゃダメだったんだ。私もお母さんと同じだわ)
なるべく早く帰国できるように手続きをして、サンフランシスコ空港から飛行機に乗った。