憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


***


(……会いたくなかった、か……)

由美の小さな声は、ちゃんと直哉に届いていた。

(もう、思い出したくないのか……)

五年前に彼女を失ってしまったと思っていた。
だが、信じられないことに直哉の前に再び由美が現れたのだ。
今度こそはと全力で彼女を追いかけたけれど、あっさり拒否されてしまった。
直哉はどんなに見苦しいと思われても、彼女ともう一度だけでも話がしたい。

(なんとかチャンスが欲しい)

言い訳としか思われないかもしれないが、どれだけ由美を思っていたか伝えたかった。あの日、彼女が訪れるのをどれだけ待っていたか……。


サンフランシスコでは、直哉は学びながらフェローとして病院でも働いていた。

由美から‶会いに行く″と連絡をもらった時は、飛び上がるほど嬉しかった。
たったひと月離れただけで、恋しくてたまらなかったのだ。
若さゆえの情熱だったのだろうか。

約束した日の前日、難しい心臓手術の立ち合いが許された。
最高レベルの手術を間近で見られるのだから、どうしても参加したかった。

その準備に追われ、由美とは連絡を取ることもできなかった。
でも、友人たちとシェアしている家での待ち合わせだから大丈夫だろうと安易に考えていた。

手術は十数時間にも及び、帰宅したのは深夜だった。
直哉はクタクタになっていたのに、友人たちはパーティーに興じていて家の中はもの凄い騒ぎだった。
少し酒を飲まされたが、すぐに酔いが回ったので自室にこもって眠りについた。

うっかりスマートフォンを病院のロッカーに置き忘れたことにも気がつかないままだった。


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