憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
疲れていたせいで、かなり深い眠りに落ちていたのだろう。
誰かに呼ばれたような気がして朦朧としたまま部屋から出たら、いきなり抱きつかれてキスされた感覚があった。
(由美⁉ いや、違う!)
ベタベタとしたキスだったので気分が悪かった。
力ずくで体を離すと、キスの相手は医者仲間のひとりだった。
『ナオヤ。目が覚めた?』
客が訪ねて来ていると言われて、ようやく意識がはっきりしてきた。
『長い黒髪の女の子が来た』と教えてくれたのだが、その時にはもう入り口にもポーチの辺りには誰もいなかった。
(由美だったのか⁉)
昨夜のパーティーに参加していたという女性は驚かせてやろうと単なるイタズラでキスしたのだと笑っていたが、生真面目な由美は誤解したはずだ。
焦った。
自分はほとんどなにも着ていない状態だし、他の女性とのキスを見られたのかと思うと言い訳も浮かんでこない。
すぐ由美に連絡しようとして、スマートフォンが手元にないのに気がついた。
急いで病院にスマートフォンを取りに行ったが、それだけでかなり時間のロスだった。
大学近辺を探しながら、何度も電話をかけたが由美に繋がらない。
まさかそのまま由美と会えなくなるなんて、その時は考えもしなかった。