憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
(でも、ちょっとした誤解だから……)
怒りが収まれば、彼女の方から連絡があるだろうなんて考えていた自分が情けない。
直哉は彼女の従順でおおらかな性格なら笑って許してくれるのではと甘えていたのだ。
愛されているという自信もあった。
由美から連絡が途絶えたのも拗ねているからで、向こうから‶会いたい”と言ってくるはずだと思っていた。
自分から素直に謝ればいいのに、当時は意地を張って直哉からは連絡をしなかった。
どんどん仕事も忙しくなってしまい、年末年始にも日本に帰れなかった。
(会いたい……でも今は仕事優先だ)
医師としての実績を作って帰国したら、彼女が喜んで自分を受け入れてくれるなんて考えていたバカな自分に腹が立つ。
翌年の春、ようやく短い休みが取れたので帰国した。
彼女も初期研修医になっているはずだと思い、まっ先に金沢へ行った。
だが、懐かしい黒板塀の家は取り壊されていた。
辺り一面が、マンション用地として更地になっていたのだ。
長谷川由美の行方を探しても、なんの手掛かりもなかった。
(由美……どこにいるんだ!)
あてもなく、由美と歩いた金沢の街を彷徨った。
近江市場、尾山神社、犀川のほとり……
プライドが邪魔をして、謝れなかった後悔で胸が張り裂けそうだった。
金沢で育んた宝物のような由美との関係を壊したのは、他でもない自分自身だったのだ。