憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
失ったもの
夏休みに入って、心臓疾患のあった佐々木とも子の手術が直哉の執刀で行われた。
克実から由美に無事成功したと連絡が入ったので、五月をはじめ、立花診療所のスタッフ一同は安堵した。
術後の経過も安定しているから、秋には日常生活に戻れるだろう。
それからも暑い日が続いていた。
いよいよ夏休みも中盤に入り、様々な子どもの感染症患者が増える頃だ。
自宅で介護されているお年寄りの熱中症も侮れない。
連日慌しい立花診療所だが、毎週木曜日の午後は休診にしている。
それに合わせて立花家のダイニングルームにはデイサービス事業に関わるタッフが集まっていた。
午前中の診察を手伝っていた由美はもちろん、森医師や看護師の早苗。ケアマネージャーの渡辺加奈や理学療法士の木下新もいる。
美也子がお昼寝タイムだから五月も加わったので、大きなテーブルいっぱいに資料を広げて今後のスケジュールを熱心に話し合っている。
「じゃあ、工事が終わるのが十一月中旬ですね」
「ええ。工務店から確認とれました」
早苗の質問に由美が答える。
「この広さがあってラッキーです。リハビリには十分だ」
部屋を見回しながら、木下新は満足そうだ。
立花家はキッチン部分は独立しているが、リビングとダイニングは繋がっていた。
それにサンルームまで加えたら三十畳はゆうに超える広さになる。
「食事と休憩のスペースは十分だし、リハビリの器具もいくつか置ける」
「一度にたくさんの方の受け入れは無理だけど……」
渡辺加奈は介護職員の人数を考えて返事をしている。
「患者さんの送迎は手配通りで大丈夫? 」
「加奈さんのお母さんの紹介で、代行業者を確保しています」
由美の返事に加奈もウンウンと首を縦に振っている。それを見た森医師は安心したように微笑んだ。