憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
由美が電源を切ってスマートフォンを置くと、早苗が話しかけてきた。
「いつものですか?」
「ええ。でも断りました」
「断ったのかい?」
森医師が驚いた顔をしている。
裕実の頼みを断ったら、由美の立場が悪くなるのではと考えたのだろう。
この場にいるのは、立花家での由美の置かれた立ち位置をよく知っている人ばかりだ。
「家族の集まりがあるんですって」
「家族の……?」
茶を配っていた五月が手を止めた。
「なんてことでしょう!」
「由美さんも家族じゃあないですか!」
早苗は驚きの声をあげるし、五月は茶宅を持つ手をプルプルと震えさせている。
「いいのよ、私は気にしていないから」
「ですが……」
五月がなにか言いたそうにしたが由美は遮った。
「デイサービスの準備で忙しくなるし、これからは断るから大丈夫」
五月たちはそれ以上なにも言わなかったが、少しだけ雰囲気が重くなってしまった。
「この家でデイサービスを始めても、あちらは大丈夫なのかい?」
森医師も、‶あちら”と表現するくらいには気を遣っているようだ。
由美と裕美との関係が悪化したら、父たちから事業を反対されるのではと心配になったらしい。