憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


土地の所有や金銭面で条件が整っているから、由美がデイサービスを始めたいというのも皆が納得できることだった。

「今回のことは、私を育ててくれた祖父母への恩返しですから」
「由美さん……」

由美の真意を聞いて、スタッフはしんみりとした表情を見せた。
五月や早苗は由美がここに引き取られた頃を知っている。
いきなり金沢からやってきた孫娘を優しく迎え入れた前院長を思い出したのだろう。
由美は雰囲気を変えようと、なるべく明るい声で五月に話しかけた。

「あ、五月さん。頂き物だけど甘いものがあったはず……」
「うっかりしておりました。水羊羹をいただいたんで冷やしていたんですよ」
「いいですねえ」

甘党の森医師が嬉しそうな顔をしたので加奈たちも笑いだした。

「森先生、辛党かと思っていましたけど甘いのお好きなんですね」
「バレました?」

森医師の返事をきっかけに、ダイニングルームは明るい声に包まれた。
みんなが由美に気を遣ってくれているのだ。
気配りの出来るスタッフに囲まれて、由美は嬉しかった。

(こんな温かい人たちに支えられているから、私は大丈夫)

このまま結婚なんてしなくても、この人たちがいればひとりでも生きていけると由美は思っていた。


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