憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
「なにかっていうと由美ちゃんを病院に残らせるのよね、お義母さん」
「いつものことよ。私は気にしていないから、理香さんも楽しんできて」
「この埋め合わせに、今度ダンナに驕らせるから」
「やった!」
由美も義兄夫婦とは打ち解けているのだろう。楽しそうな声だ。
「ステーキがいいな~」
「了解。克実に伝えておくわ」
ウフフと笑うふたりの声を聞きながら、直哉は釈然としなかった。
立花家の食事会だと聞いていたから、由美も当然いるものだとばかり思っていた。
(どういうことだ……)
直哉の脳裏に、かつて看護師長の三上が言った言葉が思い出された。
『先生がいずれ立花家にお入りになる予定でしたら今の話は気になさらないでくださいね』
あれは、由美だけが立花の家族として扱われていないということかと思い至った。
(看護師の噂通り、由美は院長の隠し子だからか)
兄妹たちと差別されているという事実を知ると、無性に腹が立ってきた。
「その後、体調はどう? 生理は順調?」
「理香さん、もう五年も経つから大丈夫ですよ」
「なに言ってるの。あなたは私の患者なんだから、たまには診察に来なさいよ」
「はいはい、お義姉様」
その会話を最後に、ふたりは別々に立ち去った。
だが、直哉はそのまま当直室から出られなかった。
(由美は理香先生の患者? しかも五年前になにが……?)
直哉の背に冷たい汗が流れた。