憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
かつて見たのと同じ、照れくさそうな笑顔で直哉が頷いている。
「君を待っている間に、ご馳走になっていたんだ」
「え?」
悪びれない表情で明るく話しかけてくる直哉の態度に、由美は思わずポカンとしてしまう。
「お医者がお腹を空かせてはいけないわ」
「美也子さんのご主人もお医者さんですか?」
「とってもいいお医者様。優しい人なの」
祖父のことを恥ずかしそうに話す祖母は、由美が見ても可愛らしい。
亡くなった人というより、いまも側にいるような雰囲気で頬を染めながら話している。
祖母はこんなに祖父のことを大切に思っていたのかと、今さらながら由美は心をうたれた。
「しっかり召し上がってくださいね」
「ありがとうございます」
ふたりの打ち解けた様子を見ると、由美はますます困惑する。
(直哉さん、なにを考えているのかしら……)
楽しそうに食事をしている美也子を見るのは久しぶりだ。
言葉がすらすらと出ているし顔色もいいから、側にいる五月までが嬉しそうだ。
「森先生、柘植先生おかわりはいかがですか?」
「あ、いただきます」
「私ももらおうかな」
テーブルを囲んで和やかに食事している直哉たちの姿を見ていると、由美は頭が痛くなってきた。
(会いたくないって知っているのに、どうして?)