憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


急患の診察で帰宅が遅くなった日。
由美が美也子たちを起こさないようにそっと家の中に入ると、サンルームのロッキングチェアで眠っている直哉の姿が見えた。
彼の姿を見たとき、不覚にも胸がときめいてしまった。

(私、彼に会いたかったんだ……)

直哉は椅子にもたれて深く眠っているようだ。
ロッキングチェアがわずかに揺れて、足元にブランケットが落ちた。
由美が走り寄って拾おうとしたら、閉じられた彼の目の下にうっすらと隈があるのに気がついた。

(こんなに疲れているのに……)

忙しい彼が、わずかな時間でも由美に会いに来てくれているのだ。
そっとブランケットをかけると、彼の眉間にキュッと皺が寄った。
五年前には見せなかった表情だ。時間をつくるために無理をしているのだろう。

(私なんかのために、こんなに疲れて……)

目の前で濃厚なキスを見せられてしまった由美は、彼を信じることができなかった。
彼からも恋からも、逃げたのだ。

(やり直したいと言われても、私が彼を避けたんだ……)

かすかな寝息をたてる直哉を見ていると罪悪感が湧いてくる。
ふいに、涙がポツリとひと粒だけ彼の手に零れた。

(ああ……私はまた彼のことが好きになっている)

恋というものを、もう一度だけ信じてみよう……由美は直哉に対して二度目の恋に落ちた。

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