憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


慌てて涙を拭うと、そっと彼を起こした。

「風邪ひくわよ、ここで寝ちゃだめ」
「ん? ああ、お帰り」

優しく響く彼の声で言われると、疲れが吹き飛ぶ気がした。

「待っててくれたの?」
「ちょっと顔が見たくなったんだ」
「そう……」

言葉が続かない。

「よかった、顔が見られて。美也子さんもお元気そうだったし」
「近頃、元気過ぎて心配なくらいよ」

「そうか……じゃあ、また」

直哉は本当に顔だけ見にきたのか、すぐに帰っていく。

物足りなさを感じた由美は、なぜ自分が彼に素直になれずにいるのかわからなくなってきた。
あんなに憎かったはずなのに、五年前と変わらない穏やかな気持ちで彼の後ろ姿を見つめているのだ。

(でも、あの頃と同じには戻れない……)

五年前に失ったものが、今も由美を苦しめていた。




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