憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
まだ由美の涙は止まらない。
あの日から気持ちがすれ違ったまま、五年も直哉と離れてしまっていたのだ。
直哉が背をそっと撫で続けるが、由美の涙は止まらない。
「もう、なにを信じていいのかわからなかった……」
「ずっと君を愛していた。今も、君だけだ」
「五年も経てば、私は変わっているかもしれないのに?」
「名前は長谷川から立花に変わっても、由美は由美だ」
直哉のその言葉を聞いてやっと由美の涙はおさまった。
「私だけ、愛してくれる?」
「ああ」
甘えるように尋ねたら、直哉は力強く頷いた。
「もう離れないで側にいてくれる?」
「もちろんだ」
由美の額に、頬の涙に直哉の唇を感じた。
「君だけだ。愛しているのは君だけだ」
目を閉じた由美の唇に、そっと柔らかい感触がおりてきた。
(直哉さんの唇……)
優しいキスだ。滑らかに触れる唇。
まるで壊れものを扱うかのように、大切にしてくれているのがわかる。
(私はお母さんのようにはならない……)
由美を授かった事実を父に話さずに金沢に帰った母。
自分はもう逃げたり隠れたりしないで、堂々と彼の愛を受け入れよう。
そして、もう一度信じてみよう。
「私を、愛して……」
その言葉を最後まで言い切る前に、直哉のキスは深まった。
そのまま、由美も彼とのキスの海に溺れた。