憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
弾劾
秋の深まりとともに、デイサービスの準備も本格化していった。
いくつかリハビリの器具を考えていた矢先、理学療法士の木下が美也子の歩き方がおかしいことに気がついた。
ふとした拍子には、少し痛みも訴えている。
車イスに頼っていた生活だったから自力歩行のリハビリを始めたのだが、股関節に負担がかかっているようだ。
木下からの連絡で森医師がすぐに診察したら、レントゲン写真で関節に変形が見られる。
「すぐに西関東総合病院の整形外科を受診しましょう」
高齢でもあるし、骨粗鬆症もあるので美也子は入院して検査することになった。
勤務中の由美にも連絡が入った。
「まさか……おばあ様が入院?」
森医師から話を聞いた由美は、手が空いた時間に美也子の病室へ行った。
個室のベッドに、美也子が横たわっている。
「由美ちゃん」
「おばあ様、ごめんなさい気がつかなくて」
五月が付き添っているが、彼女も心配そうな表情だ。
「私もわからなくて、申し訳ございません」
「おばあ様、ずっと痛みがあったの?」
「それがね、よくわからないのよ」
車イスになれてしまって、日常での運動量も落ちていたのが災いしたようだ。
「由美ちゃん、ひとりでお留守番になるけど大丈夫?」
まるで中学生の孫に話しかけるような美也子の言葉に、由美は無理やり笑顔を作った。
「大丈夫よ、おばあ様。由美はもう大きくなったの」
「あら、そうだったかしら」
ニコニコと美也子は穏やかに笑っているが、気持ちは二十年近く前に戻ったようだった。
翌日から美也子の股関節の詳しい検査が始まった。
MRIで調べると、関節に水が溜まっている。今にも骨頭が崩れるかもしれない状態だ。
「ご高齢ですが、手術をした方がいいかもしれませんね」
整形外科医の診断で、美也子はそのまま人工股関節置換術を受けることになった。