戦地に舞い降りた真の聖女〜偽物と言われて戦場送りされましたが問題ありません、それが望みでしたから〜
第33話【魔力の流れ】
しばらくしてから、床に座りながら私の治療を眺めていたサルビアが、立ち上がり、休憩終了を告げる。
「すいません、聖女様。お待たせしました。それにしても……あんなに治療をしたのに、まだ魔力が尽きないなんて。聖女様の魔力の総量は恐ろしいですね……」
「そうかしら? でも、魔力って使っていると自然と増えるでしょう? だから、ここの部隊のみんなだって、前よりもずっと増えているはずよ」
「それでもいつまで経っても聖女様に及ぶ未来が見えません。私が少し増えている間に、聖女はずっと増えてそうな気がして」
「魔力の総量を簡便に測る方法があればいいのだけれど。そうすれば、衛生兵の配備だってもう少し効率よくできる気がするの」
「聖女様は本当にいつも、より良くすることを考えてらっしゃるんですね。頭が下がります。それで、魔力が回復したらやることとはなんでしょうか?」
「ああ! そうだったわ。ごめんなさい。また、少し治療を止めるわね」
私はサルビアの方を向き、先ほどと同じように両手を差し出す。
サルビアはなんだかよく分からないといった顔を見せたが、私が伝えるより前に私の手を握り返してきた。
「さっきと同じことやるんですね? 握りましたが、何をするんです?」
「ええ。そうなの。解呪の魔法の感覚がどうしても口で伝えられないでしょう? だったら、直接身体に教えたらどうかと思って」
「え? 直接身体にですか? どういうことです?」
「今から私が練った解呪の魔法用の魔力をサルビアの身体に送るわ。全身の力を抜いて、楽にしてちょうだい。呼吸を深く。きっと魔力が、胸の辺りを通るはず。その時の感覚を掴んでちょうだい」
私は先ほどのアイオラの時とは違い、解呪の魔法に適した魔力を練り始める。
その魔力を先ほどと同じように右手からサルビアの繋いだ手へと流し込んだ。
少し緊張しているのか、若干抵抗を感じながら、私の魔力がサルビアに流れていくの感じていた。
その瞬間、サルビアの表情が驚いた顔になった。
「わ、わ! なんですか、これ? なんだか、すごく……え、え⁉︎」
私からは分からないけれど、サルビアの身体の中を、私の魔力が流れているのだろう。
左手に魔力が流れてくるの感じ、私は繋いだ手を解いた。
「もういいわ。どう? 何か感じたかしら?」
「え? え、ええ! え……と、ちょっと恥ずかしいんですけど……その……」
「どう感じたかはあなたしか分からないでしょうから無理に説明しなくていいわ。とにかく、それが解呪の魔法のあなたの感覚よ。それを自分でもできるようになれば、解呪の魔法が使えるようになるはず」
「え⁉︎ そうなんですね! 分かりました! 忘れないようにしないと!」
「それじゃあ、後は自主訓練でいいわ。同じ感覚で魔力が練れるようになったら、戻ってきなさい。その時、試すわね」
「分かりました! 失礼します‼︎」
サルビアも軍式の敬礼をすると、駆け足で訓練場へと駆けていった。
それを見送る暇もなく、私は再び治療を開始する。
「待たせたわね。今から治療を開始するわ」
「あ? ああ……お願いします」
【痛み】の呪いを受けて、痛みに苛まれているはずの若い兵士の顔は、何故だか少し紅潮していたように見えた。
☆
「戻りました! 多分……できます‼︎」
しばらくして、再びサルビアが治療場に姿を現した。
満足に満ちた笑顔を見せるサルビアに、私は期待を寄せる。
「それじゃあ、次に来た呪いを受けた負傷兵に、もう一度治療を行ってちょうだい」
「分かりました!」
ほどなくして、【痛み】の呪いを受けた負傷兵が運ばれてきた。
「痛い、痛い痛い痛い‼︎」
「もう少しの辛抱よ。さぁ、サルビア。やってみせて!」
「はい! 分かりました‼︎」
横になる兵士に向かって、サルビアはこれまでと同じように魔力を練り上げ、手に灯った光で呪いの紋様を照らす。
すると、完全にではないが、徐々に呪いの紋様が薄くなっていった。
「痛……けど、そんなに痛くなくなった?」
「よくやったわ! サルビア! これであなたも解呪の魔法を習得したのよ! 後はその感覚を忘れずに、徐々に慣れていくだけだわ!」
「やったぁ! よかったぁ……私、本当にもう無理だと……聖女様にこんなに見てもらってるのに、全然できなくて。才能ないんだって……」
サルビアは目に涙を溜めて、今にも泣き出しそうだ。
今にも抱きしめてあげたいけれど、それは後に取っておくことにした。
「さぁ! まだ完全に治ってないわよ。もう一度」
「はい! 分かりました‼︎」
袖で涙を拭った後、サルビアは再び魔力を練り、呪いの紋様に光を当てる。
二度目の魔法に晒された呪いは、今度こそ跡形もなく消え失せた。
「痛みが……消えた! ありがとう! ありがとうございます‼︎」
「こちらこそ、ありがとう‼︎ 聖女様! 私……私……」
再び目に涙を溜めるサルビアを、今度こそ私は両腕でしっかりと包み込み抱きしめた。
魔力を練ったわけでもないのに、私の胸のあたりに熱を感じた。
「すいません、聖女様。お待たせしました。それにしても……あんなに治療をしたのに、まだ魔力が尽きないなんて。聖女様の魔力の総量は恐ろしいですね……」
「そうかしら? でも、魔力って使っていると自然と増えるでしょう? だから、ここの部隊のみんなだって、前よりもずっと増えているはずよ」
「それでもいつまで経っても聖女様に及ぶ未来が見えません。私が少し増えている間に、聖女はずっと増えてそうな気がして」
「魔力の総量を簡便に測る方法があればいいのだけれど。そうすれば、衛生兵の配備だってもう少し効率よくできる気がするの」
「聖女様は本当にいつも、より良くすることを考えてらっしゃるんですね。頭が下がります。それで、魔力が回復したらやることとはなんでしょうか?」
「ああ! そうだったわ。ごめんなさい。また、少し治療を止めるわね」
私はサルビアの方を向き、先ほどと同じように両手を差し出す。
サルビアはなんだかよく分からないといった顔を見せたが、私が伝えるより前に私の手を握り返してきた。
「さっきと同じことやるんですね? 握りましたが、何をするんです?」
「ええ。そうなの。解呪の魔法の感覚がどうしても口で伝えられないでしょう? だったら、直接身体に教えたらどうかと思って」
「え? 直接身体にですか? どういうことです?」
「今から私が練った解呪の魔法用の魔力をサルビアの身体に送るわ。全身の力を抜いて、楽にしてちょうだい。呼吸を深く。きっと魔力が、胸の辺りを通るはず。その時の感覚を掴んでちょうだい」
私は先ほどのアイオラの時とは違い、解呪の魔法に適した魔力を練り始める。
その魔力を先ほどと同じように右手からサルビアの繋いだ手へと流し込んだ。
少し緊張しているのか、若干抵抗を感じながら、私の魔力がサルビアに流れていくの感じていた。
その瞬間、サルビアの表情が驚いた顔になった。
「わ、わ! なんですか、これ? なんだか、すごく……え、え⁉︎」
私からは分からないけれど、サルビアの身体の中を、私の魔力が流れているのだろう。
左手に魔力が流れてくるの感じ、私は繋いだ手を解いた。
「もういいわ。どう? 何か感じたかしら?」
「え? え、ええ! え……と、ちょっと恥ずかしいんですけど……その……」
「どう感じたかはあなたしか分からないでしょうから無理に説明しなくていいわ。とにかく、それが解呪の魔法のあなたの感覚よ。それを自分でもできるようになれば、解呪の魔法が使えるようになるはず」
「え⁉︎ そうなんですね! 分かりました! 忘れないようにしないと!」
「それじゃあ、後は自主訓練でいいわ。同じ感覚で魔力が練れるようになったら、戻ってきなさい。その時、試すわね」
「分かりました! 失礼します‼︎」
サルビアも軍式の敬礼をすると、駆け足で訓練場へと駆けていった。
それを見送る暇もなく、私は再び治療を開始する。
「待たせたわね。今から治療を開始するわ」
「あ? ああ……お願いします」
【痛み】の呪いを受けて、痛みに苛まれているはずの若い兵士の顔は、何故だか少し紅潮していたように見えた。
☆
「戻りました! 多分……できます‼︎」
しばらくして、再びサルビアが治療場に姿を現した。
満足に満ちた笑顔を見せるサルビアに、私は期待を寄せる。
「それじゃあ、次に来た呪いを受けた負傷兵に、もう一度治療を行ってちょうだい」
「分かりました!」
ほどなくして、【痛み】の呪いを受けた負傷兵が運ばれてきた。
「痛い、痛い痛い痛い‼︎」
「もう少しの辛抱よ。さぁ、サルビア。やってみせて!」
「はい! 分かりました‼︎」
横になる兵士に向かって、サルビアはこれまでと同じように魔力を練り上げ、手に灯った光で呪いの紋様を照らす。
すると、完全にではないが、徐々に呪いの紋様が薄くなっていった。
「痛……けど、そんなに痛くなくなった?」
「よくやったわ! サルビア! これであなたも解呪の魔法を習得したのよ! 後はその感覚を忘れずに、徐々に慣れていくだけだわ!」
「やったぁ! よかったぁ……私、本当にもう無理だと……聖女様にこんなに見てもらってるのに、全然できなくて。才能ないんだって……」
サルビアは目に涙を溜めて、今にも泣き出しそうだ。
今にも抱きしめてあげたいけれど、それは後に取っておくことにした。
「さぁ! まだ完全に治ってないわよ。もう一度」
「はい! 分かりました‼︎」
袖で涙を拭った後、サルビアは再び魔力を練り、呪いの紋様に光を当てる。
二度目の魔法に晒された呪いは、今度こそ跡形もなく消え失せた。
「痛みが……消えた! ありがとう! ありがとうございます‼︎」
「こちらこそ、ありがとう‼︎ 聖女様! 私……私……」
再び目に涙を溜めるサルビアを、今度こそ私は両腕でしっかりと包み込み抱きしめた。
魔力を練ったわけでもないのに、私の胸のあたりに熱を感じた。