グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
過去からの卒業

 セシレーヌの素顔を見ると、ジュニアールは目が潤んできた。
「とても綺麗なお顔だったのですね、セシレーヌさん」
 そう言われると、セシレーヌは自分の顔に触れてみた。
「どうなっているの? 」

 驚いて困惑しているセシレーヌを、ジュニアールはそっと抱きしめた。

「これで、貴女を封じていた重たい鎧はなくなりました。良かったですね」
 そっと身体を離して見つめるジュニアールの眼差しは、とても暖かく愛しさがいっぱいの目をしていた。
 その眼差しに、セシレーヌの鼓動がどきどきとうるさいくらい高鳴っているのが分かった。

「…これは…夢? …」
 うるさい鼓動を感じながら、セシレーヌはあまりにも驚きすぎて夢ではないかと思えて来た。
「夢ではありません、現実ですよ」
「…信じられない…こんな事って…」
「夢ではないと、実感したいですか? 」
「はい…」
 なんとなく無意識のままセシレーヌが答えると、そっとジュニアールがセシレーヌの顎をとった。
「貴女はずっと、過去を見たままでした。でももう、今現在を見て下さい」
 ゆっくりと近づいてきたジュニアールの唇が、そっとセシレーヌの唇に重なった…。

 何が起こったのか分からず、茫然となったセシレーヌだったが、口いるから確かに感じる暖かい感触にキスをされている事を実感した。

 何でキスするの? 
 疑問を感じるセシレーヌだが、ゆっくりと入って来たジュニアールに口の中を全て覆いつくされてしまった。
 そこから伝わって来た「好き…愛している…」と言う気持ちに、胸がキュンと高鳴った。

 抱きしめているセシレーヌの体の力が抜けそうになり、ジュニアールはギュッと支えた。

 ゆっくりと唇が離れると、セシレーヌは頬が赤くなっていたが、そんな顔を見られたくなくシレっと俯いた。

「セシレーヌさん。本来の貴女に戻ったところで、私のお願いを聞いて頂けますか? 」
「なんなの? お願いって」
 
 穏やかに微笑んでいたジュニアールは、真剣な眼差しでセシレーヌを見つめて来た。

「セシレーヌさん…。私と、結婚して下さい」
 
 はぁ? 何を言っているの?
 驚きすぎて茫然となったセシレーヌに、ジュニアールは真剣な眼差しのまま見つめ続けていた。

「貴女を一目見た時から、胸がキュンとなりました。ずっと見ていると、胸の奥から込みあがって来る想いに気づきました。…それ故に、貴女に助けて欲しかったのです。そして無事に手術が終わったら、貴女にこの想いを告げる決意をしていました。…貴女を心から愛しています」
「な…何を言っているの? 冗談はやめなよ! 」

 クルッと背を向けたセシレーヌ…。
 その背中を真剣な眼差しのまま、ジュニアールは見ていた。
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