グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~

 とりあえずジュニアールの担当医師は、セシレーヌのままにしておいた。
 だが、回診はクラウドルが行く事にした。
 2人きりになると気まずくなるだろうし、セシレーヌも戸惑ってしまう事から正常に診察ができない可能性もあると判断した。

 
 ジュニアールはクラウドルが回診に来ても、特に何も問い詰める事はしなかった。
 リハビリも順調で、一人で歩いていても平気になり病院の中庭を散歩する姿も見受けられる。

 ジュニアールが散歩をしていると、入院患者が窓から顔を出して覗いて来たり、看護師達も一目見たいと仕事の手を止めて見に来る者も多い。

 そんな状況を利用して、ジュニアールはなかなか会いに来ないセシレーヌに手紙を渡してもらう事にした。


「セシレーヌ先生」

 ナースステーションにやって来たセシレーヌに、一人の看護師が歩み寄って来た。

 まだ大きなマスクをして顔を隠しているセシレーヌだが、右目の眼帯だけは外している。
 だが、前髪が長くて右目にかかっている事からあまり気づかれていないようだ。

「先生に、これを渡して下さいと預かってきました」

 看護師に差し出された一通の手紙。
 白い綺麗な封筒に「セシレーヌ先生へ」と丁寧な文字で書かれていた。

「有難うございます」
 手紙を受け取ったセシレーヌは、そのまま白衣のポケットにしまった。
「先生、なんだか雰囲気が変わりましたね」
「え? 」

「あれ? 右目の眼帯はずしているのですね? 気づきませんでした」
「あ、ああ…眼帯しなくても、平気になったから…」

「そうなのですね。今の先生の方が、ずっと素敵ですよ」

 素敵…そんな言葉言われた事なかたなぁ…。


 そのまま休憩に入る為、セシレーヌは休憩室へ向かった。

 合間に食べるお弁当を売店で購入してきたセシレーヌ。
 お弁当の言っても、いつも食べている事から飽きてしまい今では軽くサンドウィッチを買ったりおにぎりを買う程度で、あとは珈琲を飲んで済ませている。

 コンコン。
「失礼します」

 他の科の女医がやって来た。

「あ、セシレーヌ先生。これ、渡して下さいと言われて預かってきました」

 女医から渡されたのは、女性が食べそうなくらいの量のお弁当箱だった。
 オシャレなピンク色のハンカチで包んであり、袋は可愛い花柄のオレンジ系。

「誰からですか? 」
「さぁ。…以前、お世話になった患者さんって言っていましたよ」

 患者さんがこんなことするのかな?
 ちょっと疑問を感じたセシレーヌだったが、お弁当を開いてみると、美味しそうなお弁当で思わず笑みがこぼれた。
 
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