グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~

 食べやすそうな小さなおにぎりが3つと、ブロッコリーとレタスとポテトサラダ、柔らかそうな唐揚げと人参とジャガイモの煮物が入っていて、デザートにオレンジが添えてある。

 こんなお弁当、売店に売ってない…。
 本当に食べていいのかな?

 お弁当を食べるための割りばしが入っていて、その裏に「どうぞ召し上がって下さい」と書いてあった。

 誰からは分からないけど、素直に頂こう。
 そう思ってセシレーヌはお弁当を食べ始めた。

 おにぎりを一口食べると、冷めているのにとても美味しくて中身は鮭が入っていた。
 唐揚げもとってもジューシーで、ブロッコリーもレタスも新鮮だった。

 こんなに美味しいお弁当を食べるのは、どのくらいぶりだろう…。
 セシレーヌはとても嬉しい気持ちになれた。

 お弁当のおかげで午後からは、とても良い気分で仕事をしていたセシレーヌ。



 今日は宿直の為セシレーヌは泊まり込みの勤務。
 20:30分頃から看護師達の申し送りが始まり、その間に急変したり様態が悪い患者さんを回診する。

 今日は特に何もなく平和な夜になりそうだ。


 宿直の時は急患が来なければゆっくりと過ごせる。
 
 宿直室でカルテをまとめながら、セシレーヌは静かな夜を過ごしていた。
 
 
 カルテを書き終えたセシレーヌは、休憩に入る為、宿直室に用意されている仮眠室に向かった。
 緊急時の対応に備えて仮眠室のベッド脇には、携帯電話が置かれている。

 携帯電話はまだそれ程使われていない。
 平民の間でもお金持ちや、特殊な仕事をしている人以外は持ち合わせていない。
 
 ベッド脇に携帯電話を置いたセシレーヌは、仮眠の為ベッドに入って横になった。

 軽く目を閉じて一息ついた時。

 コンコン。

 仮眠室をノックする音が聞こえた。

 誰だろう? 仮眠室に来なくても、用があるなら携帯電話を鳴らすはずだけど。

 ベッドを出てセシレーヌはドアへ歩み寄って行った。


 コンコン。
 またノックの音がした。

 こんな夜更けに誰? 
 そう思いながらそーっとドアを開けてみた。

「こんばんは」

 小さな声で挨拶をする声が聞こえた。
 
 ドアの向こうに立っていたのは、ジュニアールだった。

 え? なんでここに? 
 驚いたセシレーヌは言葉が出なくて、茫然とジュニアールを見ていた。
< 18 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop