グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
食べやすそうな小さなおにぎりが3つと、ブロッコリーとレタスとポテトサラダ、柔らかそうな唐揚げと人参とジャガイモの煮物が入っていて、デザートにオレンジが添えてある。
こんなお弁当、売店に売ってない…。
本当に食べていいのかな?
お弁当を食べるための割りばしが入っていて、その裏に「どうぞ召し上がって下さい」と書いてあった。
誰からは分からないけど、素直に頂こう。
そう思ってセシレーヌはお弁当を食べ始めた。
おにぎりを一口食べると、冷めているのにとても美味しくて中身は鮭が入っていた。
唐揚げもとってもジューシーで、ブロッコリーもレタスも新鮮だった。
こんなに美味しいお弁当を食べるのは、どのくらいぶりだろう…。
セシレーヌはとても嬉しい気持ちになれた。
お弁当のおかげで午後からは、とても良い気分で仕事をしていたセシレーヌ。
今日は宿直の為セシレーヌは泊まり込みの勤務。
20:30分頃から看護師達の申し送りが始まり、その間に急変したり様態が悪い患者さんを回診する。
今日は特に何もなく平和な夜になりそうだ。
宿直の時は急患が来なければゆっくりと過ごせる。
宿直室でカルテをまとめながら、セシレーヌは静かな夜を過ごしていた。
カルテを書き終えたセシレーヌは、休憩に入る為、宿直室に用意されている仮眠室に向かった。
緊急時の対応に備えて仮眠室のベッド脇には、携帯電話が置かれている。
携帯電話はまだそれ程使われていない。
平民の間でもお金持ちや、特殊な仕事をしている人以外は持ち合わせていない。
ベッド脇に携帯電話を置いたセシレーヌは、仮眠の為ベッドに入って横になった。
軽く目を閉じて一息ついた時。
コンコン。
仮眠室をノックする音が聞こえた。
誰だろう? 仮眠室に来なくても、用があるなら携帯電話を鳴らすはずだけど。
ベッドを出てセシレーヌはドアへ歩み寄って行った。
コンコン。
またノックの音がした。
こんな夜更けに誰?
そう思いながらそーっとドアを開けてみた。
「こんばんは」
小さな声で挨拶をする声が聞こえた。
ドアの向こうに立っていたのは、ジュニアールだった。
え? なんでここに?
驚いたセシレーヌは言葉が出なくて、茫然とジュニアールを見ていた。