グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
本当の気持ち…
「ちょと失礼しますよ」
仮眠室の中へとジュニアールは入って行った。
「すみません、こんな夜更けに。なかなか会えないので、先生が今日は宿直だと伺ったものですから。会いに来ちゃいました」
ジュニアールは、ちょっと茶目っ気に言った。
「ご用件は…なんでしょうか? 」
緊張した面持でセシレーヌが尋ねると、ジュニアールはニコっと笑った。
「いえ、もうすぐ退院なので。先生に会っておきたかったのです。退院したら、会える機会が減ってしまいますから」
会える機会って…退院したら、もう関わりはなくなるわけだから…。
そう思ったセシレーヌはシレっとした表情を浮かべていた。
「先生。お気持ちは、変わらないままでしょうか? 」
「…はい…」
ムスっとして答えるセシレーヌを、ジュニアールはじっと見て目ていた。
「そうですか。では、一つだけ答えて頂けますか? 」
「なんですか? 」
「先生は、私の事を好きですか? 嫌いですか? 」
突然率直に聞かれて、セシレーヌは戸惑った。
好き? 嫌い? そんなこと考えたことはないけど、嫌いではないと思うけど。
でもここは嫌いだと言っておいた方が、もう追いかけて来なくなるだろうから…。
「…嫌いです…」
ボソッとした声でセシレーヌは答えた。
答えるセシレーヌが目を伏せたままで、何だか辛そうな表情を浮かべている事から、ジュニアールは本心ではないと感じ取った。
「先生。相手の質問に答えるときは、ちゃんと目を見て答えるもですよ。今、お答え頂いたお気持ちが。先生の本心であるのでしたら、どうか私の目を見て答えて下さい」
何でそこまで言われなくてはならないの?
そう思いながら、セシレーヌはジュニアールをチラッと見たが、とても真剣な目で見つめている顔を見るとそのまま視線を反らしてしまった。
視線を反らしたセシレーヌを見ると、ジュニアールは一歩・一歩…セシレーヌに歩み寄って来た。
なに? 何で近づいてくるの? 来ないでよ!
シュッ!
何か刃のようなものが飛んできて、ジュニアールの頬をかすった。
うっすらとユニアールの頬に血がにじみ出ていた。
「あ…」
またやってしまった…。
どうしよう…国王様を、傷つけてしまった…。