グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
「有難うブッドル」
見かけよりも優しい声のジュニアール。
ブッドルと呼ばれる男性は、長年お城に使えている執事である。
今はジュニアールの専属として、身の回りの世話を中心に使えている。
ブッドルに連れられて、ジュニアールは客間へとやって来た。
広い空間に、黒革のソファーとガラス細工で出来たテーブルが置いてあり、窓際には観葉植物が置いてある。
白いレースのカーテンが、外から入って来る日差しを優しく包んでいるようだ。
「こんにちは、クラウドル先生。わざわざお越し頂いて、申し訳ございません」
ソファーに座っていたクラウドルと呼ばれる男性医師は、そっと立ち上がりお辞儀をした。
インテリーな眼鏡をかけた生真面目そうな、茶色の髪の男性医師クラウドルは国立病院の院長で王室専属の医師で10年以上使えている。
背が高くスラっとしているインテリーなイケメンで、病院でもかなり好評の医師ゆえにわざわざ遠くの南グリーンピアトからも受信に来る患者さんがいるくらいだ。
いつもは白衣を着ているが、今日はお城に来た事からシックなグレーのスーツに身を包んでいる。
そんなクラウドルの隣には、対照的と言っても過言ではない女性がいた。
綺麗なブロンドの髪をしているが、ボサボサな感じで顔が隠れるようなボブヘヤーにしていて、右目を眼帯で覆い大きめのマスクで顔の半分以上が隠れていて、右手に白い手袋をはめている。
黒いスーツに身を包んでいるが、女性にしては長身で170cm以上あるようだ。
ジュニアールが傍に来て、どうぞ座って下さいと促されクラウドルと女性はソファーに座った。
ソファーに座るとジュニアールは、クラウドルの隣にいる女性に目を向けた。
俯き加減で顔を見せようとしない女性をじっと見ているジュニアール…。
「国王様、本日は手術当日に私の助手として一緒に付き添ってもらう事になりました、女医のセシレーヌを一緒に連れて参りました」
「セシレーヌさん…。素敵なお名前ですね」
まるで吸い込まれるような目をしてジュニアールはじっとセシレーヌを見ていた。
…どうして、そんなに悲しい目をしているのですか? …貴女は何も悪くありませんよ…顔を上げて下さい、そして私を見て下さい…。
ジュニアールは心の中でそう呼び掛けていたが、セシレーヌは一向に顔を上げようとしなかった。
「国王様。手術の日程ですが、2週間後に決定いたしました。ご都合がいかかでしょうか? 」
クラウドルが尋ねても、ジュニアールはじっとセシレーヌを見つめたままだった。
「国王様? どうかなさいましたか? 」
再び声をかけられると、ハッと我に返ったようにジュニアールはクラウドルを見た。
「何か、言われましたか? 」
聞いていなかったのか? と、クラウドルはちょっと驚いた目を向けた。
「手術の日程ですが、2週間後に決まったのですが。国王様のご都合は、よろしいでしょうか? 」
「はい、私はいつでも構いません。今は、手術が優先ですからね」
「それでしたら安心です。執刀は私が致しますので、どうかご安心下さい」
ジュニアールはまた、吸い込まれそうな目をしてセシレーヌを見つめた…。