グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
「そうだったのですか。初めてお会いした時から、メイシスと同じエネルギーが貴女の中にあると感じていました。それは…」
ジュニアールは、そっとセシレーヌの胸に触れた。
「…伝わってきます。メイシスのエネルギーが…」
胸に触れたジュニアールの目が潤んできて、そのままセシレーヌを見つめてきた。
「有難うございます。メイシスの心臓を受け継いでくれて」
「何を言っているの? 愛する人の命を奪われているんだよ? 」
「いいえ、奪っていません。貴女はただ、選ばれただけです。メイシスは、喜んでいます。貴女に心臓を受け継いでもらえたことを」
「なんで? 」
触れられたジュニアールの手から、暖かいエネルギーが流れてくるのを感じるとセシレーヌの目が潤んできた。
「…愛する人の命を奪われて、憎くない? 」
「いいえ、とんでもありません。感謝しています、貴女のように立派な人が受け継いでくれたのですから」
「だって…もっと一緒にいたかったでしょう? 愛している人だもん…」
スッとセシレーヌの頬に涙が伝った。
その涙はとても清らかで、セシレーヌの優しさが伝わって来てジュニアールの胸がキュンとなった。
「一緒にいたかったのはあります。でも、これはメイシスが決めて来た事なのです。魂が決めて来た事に、逆らうことはできません。残された臓器で、助かる人がいるなら。それは、メイシスが望んだことなのです。でもこうして、私と貴女が出会たことで。メイシスが紡いでくれた命に、私は出会うことが出来ました。感謝しかありません。貴女のことを、心から愛することが出来て私は幸せですよ」
何も言えなくなり、セシレーヌはスッと視線を落とした。
視線を落としたセシレーヌの頬に涙が伝った…。
悲しい気持ちと嬉しい気持ちが込みあがって来て、涙が止まらなくなりセシレーヌ自身もどうしたら良いのか分からなかった。
そんなセシレーヌを、ジュニアールはそっと抱きしめた…。
「泣いていいですよ。今までずっと、泣く事もしないで我慢して来た事がよく分かります。ここには私だけしかいませんから、心行くまで泣いて下さい。そして、もう終わらせましょう。自分を責める事を…」
責めなくていいの?
許してもらえるの?
まだどこか葛藤しているような気もしたが、セシレーヌの内側にスーッと何かが入って来て重たいものがゆっくりとそぎ落ちてゆくような気がした…。
暫くの間、泣いているセシレーヌを包み込むようにジュニアールは抱きしめていた。