グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
「落ち着きましたか? 」
そう尋ねられると、セシレーヌはジュニアールの胸の中でそっと頷いた。
「セシレーヌさん…。貴女の本当の気持ちを、私に教えて頂けませんか? 」
本当の気持ち…。
初めてジュニアールに会った時、じっと見てくる視線にどうせ醜い顔して医者なんかやっているんだって見ているのだと思った。
だが見つめている瞳は、とても優しくてどこか愛しさを感じた。
命がけの手術を自分に頼み込んできて、何を血迷っているのかと思ったが、ジュニアールの目は真剣だった。
その時から胸がキュンとなって、ずっと忘れられない気落ちが込みあがって来たのは確か…。
好きって…この気持ちを言うのだろうか?
恋なんてしてはいけないって、ずっと思っていたから…でも、好きか嫌いかって聞かれたら…。
ゆっくりと視線を上げたセシレーヌは、そっとジュニアールを見つめた。
見上げたジュニアールの頬に、かすったキズがあるのが目に入り、そっを手あてたセシレーヌ。
じんわりと暖かい温もりがジュニアールの頬に伝わって来て、ゆっくりと傷が治って行った…。
「優しい光ですね…。黒魔法だけではなく、治癒魔法も使えなんてすごいですね」
「…父が魔族の血を引いていて、母が白魔術の一族の血を引いていたので。私は両方使えます。でも…黒魔法は、コントロールができないので…」
「コントロールできなかったのは、それだけ自分の本当の感情を押さえていたからでしょうね。でも、それも解放してあげれば何も恐れる事はなくなりますよ」
泣きそうな目をしてセシレーヌはじっと、ジュニアールを見ていた。
私きっと…国王様の事が好きなんだと思う…
でも王妃様の事を思うと…
(自分に正直になって。貴女の命はもう、貴女のものだから誰にも遠慮しないで)
また胸の奥から聞こえて来た声…。
「…ごめんなさい。…私、酷い事ばかり言ってしまいました…」
「謝る事はありません。何も酷い事など、私は言われていません。貴女の正直な気持ちを、ずっと聞いていたと思っています」
「…こんな私が好きになってもいいですか? 国王様の事を…。何もない私だけど…」
「是非好きになって下さい。私も命ある限り、貴女を幸せにして愛してゆきますから。貴女は今ここにいるだけで、尊い存在ですよ。そのままの、貴女でいて下さい。それが私の願いです」
何も言えなくなり、セシレーヌはそっと頷いた。
頷いたセシレーヌに、そっと微笑んだジュニアールはそのままセシレーヌの唇にキスをした…。