グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
立ち去る時…
「ねぇ、セシレーヌ先生ってなんだか随分と綺麗になったと思わない? 」
ナースステーションにいる数名の看護師が、セシレーヌの噂話をしている。
「そうよね、マスクで顔を隠しているけど。最近、眼帯はしていないわよね? 」
「そうそう、前髪が長くて隠れているけど。眼帯していた方って、酷い火傷の跡があったんじゃなかった? 」
「うん、顔も酷い火傷の跡があるからマスクしているのよね? 」
「手術の時にマスクはずしたの、私見た事あるけど。酷いものだったわよ」
「患者さんも、可愛そうにって言っていたくらいだったものね」
「でも最近は、患者さんもセシレーヌ先生が綺麗になったって言っているわ」
「もしかして、恋でもしているのかしら? 」
「でもセシレーヌ先生って、ぶっきらぼうじゃない? あんな人に、近づく男いるのかしら? 」
「まぁ、世の中には男の姿でも女性的な人がいるから。そうゆう人には、好かれるかもね」
セシレーヌを話題にしていた看護師達は、推定年齢35歳以上だが全員独身。
人の事ばかり噂するのが好きなようだ。
「あ、セシレーヌ先生だ」
ナースステーションの前を、セシレーヌが通り過ぎるのを看護師達は見ていた。
「歩く姿勢も変わったんじゃない? 」
「そうね、前みたいに俯いていないし」
去り行くセシレーヌは、凛とした姿で歩いて行った。
1週間後。
退院してきてから、ジュニアールは溜まっていた書類に追われて職務室にずっとこもっていた。
そんな中。
コンコン。
「失礼します、国王様」
執務室で仕事をしているジュニアールの元に、ブッドルがやって来た。
「国王様、大変な事になっております」
「どうかしたのですか? 」
ブッドルは一冊の週刊誌のような雑誌を、ジュニアールの机の上に置いた。
その雑誌にはイディアと言う貴族令嬢が、ジュニアールと結婚が決まった報じられていた。
そしてイディアが、ジュニアールにキス押している写真が掲載されている。
「これは…」
写真を見てジュニアールは思い出した。
退院してお城に戻って来た時、待ち構えていた貴族令嬢がいた。
それがイディアだった。