グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
「執刀は…セシレーヌ先生にお願いします…」
え?
クラウドルは耳を疑った。
セシレーヌはちょとだけ視線を上げて、ジュニアールを見たが、すぐさま俯いていしまった。
「セシレーヌ先生。かなりの腕を持っていらっしゃいますよね? 今まで、セシレーヌ先生に助けられた患者様が、沢山いらっしゃるのが判ります。院長と匹敵するくらいの腕前ですよ。先生になら、安心してお願いできます」
穏やかな笑みを浮かべて、セシレーヌに向かってお願いするジュニアールを見て、クラウドルは驚くばかりで言葉が出なかった。
「…何言ってんだよ…。院長の方がいいに決まってる…私なんか…無理! 」
俯いたまま、セシレーヌはぶっきらぼうに答えた。
「セシレーヌ、言葉を慎みなさい。相手は国王様だぞ」
言われてもセシレーヌはムスっとしたまま黙っていた。
「構いませんよ。とても正直な方じゃないですか。笑いたくないときは、無理に笑う事はありません。でも私には分かりますよ、貴女の心の暖かさが。それ故に、貴女にお願いしているのです。貴女になら、私の命を預けても後悔はありませんから」
無理だから…そう答えようとしたセシレーヌだったが…。
(大丈夫、貴女が手術して。国王様を助けてあげて)
胸の奥から聞こえてきた優しい声に、セシレーヌの胸がキュンと鳴った。
「お願いします、セシレーヌ先生。貴女が執刀して下さらないなら、私は手術は受けません」
本気で言っているのか? と、クラウドルは驚いてポカンとなってしまった。
ムッとした目のまま、セシレーヌはジュニアールを見た。
とても冗談で言っているような顔はしていないジュニアールを見て、本気でお願いしているのが伝わって来たセシレーヌはゆっくりと頷いた。
「…そこまで言うなら、引き受けるよ。でも、どうなっても責任はとらないから、そのつもりでいて」
ぶっきらぼうな言葉で言い放ったセシレーヌに、ジュニアールは満面の笑みを浮かべて頷いた。
「有難うございます。安心して、手術を受けられます」