グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~

 その写真は古くなっているが、若かれし頃のセシリアの父親とセドリシアが写っている。
 2人でお墓にお参りしたようで、一緒に写した様子だ。

「貴女のお父様は、フェリシアという名前ですね? 」
「はい」
「お母様はリーチェル。南グリーンピアトでは、有名な医師家系のお身内ですね? 」
「詳しいことは分かりかねます。母は、家の事を話してくれませんでした。いつも、お爺ちゃんとお婆ちゃんが遊びには来てくれていましたが」
「そうだったのですね。でも、貴女の有能な医師としての腕を見ればよく分かりますよ」

 父と母の素性なんて聞いたことがなかった。
 しかし、父は腕利きの弁護士だった…セドリシアさんも敏腕弁護士。
 2人が兄弟だと言われれば納得できものがある。

「今日は、貴女に私の資産を受け継いでほしくて会いに来たのです」
「え? …」

「私は一度結婚しておりますが、子供がいません。結婚していたと言っても、入籍しておらずで…。跡取りもいませんので、唯一の兄弟であるフェリシアの血を引く貴女に受け継いでほしいのです」
「そんな…」

「安心して下さい。借金は全くありませんので。北グリーンピアトに屋敷を構えており、グリーンピアトには別荘を構えていて仕事の時はそこを使っております。私が生きている間は、共有財産になりますが。私がいなくなった時は、全て貴女のものになります」
「私が、そんな高価なものを受け継いで…。他の親族の方は、何も仰らないのでしょうか? 」

「他の親族は、私とは無縁ですのでご心配なく。ちゃんと、法的に口出しできないようにしておりますので」

 セシリアは急に飛び込んできた話に戸惑っていた。
 セドリシアが騙そうとしているようには見えないが、この話を受ける事にメリットがあるのだろうか?

 この先どうしてゆくのかは、正直ハッキリと決めてはいないけど…。

(私と、結婚して下さい)

 ふと、ジュニアールの言葉を思い出したセシリア。

 あの言葉は一夜の夢だから…
 貴族令嬢との報道や妊娠報道…真実かどうかを別としても、自分が釣り合う人ではないから…。
 そうなると、この先生きてゆく中でお金は沢山あた方がいいに決まっている。

「少し…考えさせて下さい…。急には、答えが出せません…」
「分かりました。お待ちしますよ」

 なんという事なのだろうか?
 誰も見寄りはないと思っていたが、とんでもない豪富豪が現れるとは…。

 急展開に背知りは戸惑いを隠せなかった。



 暫く話し込んでいたセシリアとセドリシア。


 話を終えたセドリシアを病院の玄関まで送って来たセシリアは、タクシーが止まっているのを確信して案内しようとした。

 すると…

「あら? セドリシアじゃない」

 かん高い声色の声がして振り向くと、そこにはイディアがいた。
 妊娠しているというのに派手なミニのワンピース姿に、ハイヒール姿で現れたイディア。

 セドリシアは怪訝そうな目をしてイディアを見ていた。
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