グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
足早に歩いてきたセシレーヌは、そのまま大通りへ出て来た。
すると一台の車がスーッとやって来て、セシレーヌの傍で止まった。
「セシレーヌさん? どうしたのですか? 」
後部座席の窓を開けて声をかけて来たのはセドリシアだった。
「あ…セドリシアさん…」
「どうかしたのですか? 顔色が良くありませんが」
「あ、いえ…」
遠くからトワイヤルが追いかけてくる姿が目に入り、セシレーヌの表情が怯んだ。
その表情を見たセドリシアは、ピンと何かを感じた。
「とりあえず乗って下さい。家まで、送りますよ」
「は、はい…」
戸惑っていたセシリアだったが、トワイヤルに捕まってしまっては大変だと思いそのままセドリシアの車に乗りこんだ。
通り過ぎて行く車を、トワイヤルはちょっと悔しそうに見ていた。
ゆったりとした高級車の中、セシリアはちょっと震えていた。
「何かあったのですか? 」
尋ねられると、セシリアは小さく頷いた。
「私が会いに行ったのは、正解だったかもしれませんね。あの病院から、何か嫌な感じを受けていたのです。病院自体は、そうではないと思いますが。何か、よからぬことを企んでいる者がいるような感じがしました」
「…そうですね…」
「国王様の結婚報道にしても、妊娠報道にしても。病院が絡んでいるような気がしているのです。なので、早めに答えをもらえませんか? あの話について」
あの話し…
話の流れからすると、セドリシアの話を受ければ南グリーンピアトに行く事にあるのだろう…。
「あの。…お話を受ける事になれば、私は南グリーンピアトに行く事になるのでしょうか? 」
「そうして頂けると助かります。色々と手続きはありますが、スムーズに私の資産を受け継いでもうらうには。貴女には、私の養女になってもらうのが一番良い方法です」
「そうですか…」
ずっと火傷の傷跡を背負ってグリーンピアトで生きて来た…。
誰ともれ何もしないし結婚なんてできるわけがないと…そう思ってずっと生きて来た…。
でも突然ジュニアールにプロポーズされて…一夜の夢を見てしまった…。
ここにいない方がいいかもしれない。
トワイヤルに必要に着きまとわれるのも面倒であり、またあんな報道を見てしまえば少なからずともモヤっとしてしまうのは間違いない。
それならセドリシアの養女になって、南グリーンピアトに行って誰も知らない場所で静かに暮らしてゆく方がいいだろう…。